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しらがこぞう

白髪小僧

杉山 萠円

「白髪小僧」誠文堂、1922(大正11)年11月

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 98,770 字 · 194 页

青空文庫

「アーッハッハッハッ」

と高らかに笑い出しました。その気味悪さ。恐ろしさ。周囲の兵士は思わず槍を手許に控えて、タジタジとあと退りをしました。

けれども紅木大臣の笑い声は、なおも高らかに続きました――

「アッハッハッハッ。可笑しい可笑しい。こんな可笑しい事が又とあろうか。何という馬鹿馬鹿しい事だ。アッハッハッハッ、俺は今やっと思い出した。昔の名前を思い出した。俺の名前は美留楼公爵というのだった。何だ、馬鹿馬鹿しい、馬鹿馬鹿しい。馬鹿馬鹿しい。アッハッハッ。

あれ、美留女が本を読んでいる。白髪小僧が居眠っている。アハ。アハ。何の事だ。俺はこのお話を本当の事かと思った。これ、美留女。止めろ。止めろ。そんな本を読むのを止めろ。あんまり非道いではないか。あんまり情ないではないか。お前はそれを平気で読むのか。お父さまは最早聞いていられない。コレ。止めろ。止めろと云うに」

と云いながらよろよろと前の方によろめき出ましたが、濃紅姫の寝台に行き当って、又ハッと気が付きました。そうして寝台に倒れかかったままじっと濃紅姫の死体を見ていましたが、見る見るその眼は又旧の通りに釣り上りました。