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しらがこぞう
白髪小僧
杉山 萠円
「白髪小僧」誠文堂、1922(大正11)年11月
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 98,770 字 · 194 页
大臣夫婦の死体は最早切れ切れに焼け爛れて、とても青眼先生の力では助ける事が出来ませんでした。
青眼先生は余りの事に声を立てて泣き出しました。そうしてもしや一ツでもいいから助かりそうな死骸は無いかと、暗の中に散らばっている死骸を一ツ一ツに検めながら、奥の方へ来る中に、不図青眼先生は屋敷の真中あたりで、切れるように冷たい者を探り当てて、ヒヤリとしながら手を引き退めました。それは鉄と氷との二ツの死骸でしたが、薄い月の光りはその物凄い白と黒の二ツの姿を照して、何だか両方とも青眼先生を睨んでいるように思わせました。
青眼先生は思わずタジタジとあと退りをしました。そうして二ツの死骸をじっと見入りました。すると不思議や、青眼先生の直ぐうしろに寝ていた一ツの首が、白い眼を開いて月の光りを見ながら、唇をムズムズと動かし始めましたが、やがて不意に――
「嘘吐き」
と云いました。青眼先生はハッと驚いて背後をふり向きますと、うしろにはたった今検めた馬丁の死骸があるばかりで、しかも手も足もバラバラになっているのですから、口を利く気遣いはありませぬ。先生は大方耳の迷いだろうと思って、ここを立ち去ろうとしますと、今度は別の死骸の、身体から離れて転がっている首級が、眼をパッチリ開いて、月あかりに先生の顔をジッと睨みながら――