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しらがこぞう

白髪小僧

杉山 萠円

「白髪小僧」誠文堂、1922(大正11)年11月

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 98,770 字 · 194 页

青空文庫

野原には露が降りて、空には星が光り初めた。けれどもお爺さんは追っかける事を止めなかった。とうとう山の中へ分け入って、小さな池の縁をめぐって、深い大きな杉の森に這入った時は、あたりがすっかり真暗になって、あとにも先にももう何にも見えず、只怖ろしさの余り声を震わして泣いて行く美留女姫の声を便りに、木の幹を手探りにして追うて行った。その内に白髪小僧は、ヒョロヒョロに疲れて、息をぜいぜい切らすようになった。それでも構わずに走っていると、あっちの根っ子に引っかかり、こっちの幹に打っつかり、もうこの上には一足も行かれないようになって――

「オーッ」

と呼んだと思うと、そのままそこによろめき倒れてしまった。

五 七ツの灯火

すると不思議な事には今呼んだ声が、誰かの耳に這入ったものと見えて、遠くで高らかに――

「オ――オ……」

と返事をする声がきこえた。白髪小僧はじっと顔を挙げて向うを見ると、丁度今声の聞こえたあたりに小さな燈光が一ツチラリと光り初めた。やがて、その光りが三ツになった。五ツになった。七ツになった。と思う間もなくその七ツの燈火が行儀よく並んでこちらへ進んで来た。