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しらがこぞう

白髪小僧

杉山 萠円

「白髪小僧」誠文堂、1922(大正11)年11月

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 98,770 字 · 194 页

青空文庫

六 大臣と漁師

これから後、藍丸王が見たいろいろの出来事は、当り前の者ならばその都度驚いて、眼でも眩わして終わなければならぬような事ばかりであった。

今日は藍丸国王の御誕生日だというので、紅木公爵という、丈の高い、黒い髪を生やした、あの美留女姫のお父様によく肖た総理大臣と、沢山の護衛の兵士に連れられて、お城の北の紫紺樹という樹の林の中に在る、石神の御廟に朝の御参りをしたが、その時沢山の兵士が皆一時に剣を捧げて敬礼をした時の神々しかった事。それから宮中の大広間に出て、大勢の尊い役人や、この国の四方を守る四人の王様や、その家来達から、一々御祝いの言葉を受けた時の厳そかだった事。又は美事な十二頭立の馬車に乗って、前後を騎兵に守らせながらお城の南の広い野原に出て、何万何千とも知れぬ兵隊の観兵式を行らせた時の勇ましかった事。それから夜になって、宮中に催された大音楽会と、大舞踏会と、大晩餐会の大袈裟であった事。その他見る者聞くもの何一ツとして、眼を驚かし耳を驚かさぬものはなかった。

けれども白痴の白髪小僧の藍丸王は、相変らず悠々と落ち付いて、まるで生れながらの王ででもあるように、ニコニコ笑いながら澄まし込んで、大勢の家来に平常よりずっと気高く有り難く思わせた。