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しらがこぞう

白髪小僧

杉山 萠円

「白髪小僧」誠文堂、1922(大正11)年11月

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 98,770 字 · 194 页

青空文庫

たった一人の淋しさつらさ

堪え切れずに天地を恨み

吾が身を怨んで死んでしまった」

残る怨みのその一念が

眼玉に移って女に化けて

口に残って坊主になって

鼻に移って赤児に化けて

耳に残って爺になって

今はこの世で藍丸王に

昔の主人の淋しさつらさ

思い知らせる時が来た」

花が咲いても紅葉をしても

風が吹いても時雨が来ても

見えもしなけれあ聞こえもしまい。

飢えも渇きもせぬその代り

どんな御馳走貰ったとても

味もわからず香気も為まい」

鞭に打たれて血が浸み出ても

痛くもなければ悲しくもない。

音も香も無い不思議な身体。

この世に居ながらこの世を知らぬ。

夜か昼かは愚かな事よ

我が身の在り家も我が身に知らぬ

世にも淋しい憐れな生命」

世界の初めの石神様が

闇へと生れて闇へと帰る

たった一人の淋しい心

思い知ったか。思い知れ」

と口々に唄って踊っていたが、やがて赤ん坊が一声ギャッと叫ぶと一所に、四人は一度に燃え立つ火の中へ飛び込んで終った……と思う間もなく燃え上る火の中から、一人の少年が髪毛の色から衣服まで藍丸王そっくりの姿で、藍丸王の眼の前に踊り出した。