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しらがこぞう
白髪小僧
杉山 萠円
「白髪小僧」誠文堂、1922(大正11)年11月
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 98,770 字 · 194 页
そうしてあの面白い、石神の話しの続きがわかるのではないか。このまま止めて引っ返しては何にもならない。妾は矢張り旧の漁師の娘になって、面白い事、楽しい事は一ツも見る事も聞く事も出来なくなるではないか。妾は死んでも引き返す事は出来ない。そしてもし妾が女王になるならば、ここで魚に喰われるような事はあるまい。もし女王になれないのならば、一層の事喰われて死んでしまった方がいい。何でも彼でも運だめしだから、このまま行けるだけ行って見よう」
と勇気を奮い起こしてなおも底深く沈み入りました。すると又あたりの様子が変って来て、何の影も見えなくなり、水は死んだ人の肌のように冷たく、静かに、動かなくなりましたから、その恐ろしさ、気味の悪さ。却て最前の怖い形をした魚が居た方が、余程淋しくなくていいと思った位でした。
けれどもその中にそこも通り越したと見えまして、はるかの底に、何か美しく光るものが見えて来ましたから、嗚呼嬉しい、あれこそ鏡の置いて在る処に違いないと、なおも水を掻き分けて潜って行きますと、やがてそこら中が眼の醒める程美しく、明るくなって来ました。見ると湖の底の深い、透き通った緑色の水の中に、滑らかな光沢を持った藻が、様々の色の花を着けて茂り合っていて、その間を眩しい光りを放つ魚が、金色銀色の泡を湧かしながら、右往左往