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しらがこぞう

白髪小僧

杉山 萠円

「白髪小僧」誠文堂、1922(大正11)年11月

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 98,770 字 · 194 页

青空文庫

美留藻はこれは屹度夢の中の美留女姫が現われて、妾に鏡の在り所を教えにお出でになったに違いない。そうして妾は矢っ張り旧来の通りの美留藻で、お姫様でも何でもなかったのだと思いまして、あまりの恥かしさに顔を手で隠しますと、先方でも顔に手を当てました。自分の真似をされて、美留藻はいよいよ恥かしくなって、宝石の上にペタリと座りますと、先方も亦ペタリと座ります。オヤと思いながら立ち上って向うを見ますと、向うも矢張り立ち上ってこの方を見ていました。試しに両手を動かして見ますと、向うでも動かします。足を踏みますと先方も踏みます。

扨はと思って近寄って見ますと、これが紛れもない白銀の鏡で、今まで美留女姫と思ったのは自分の姿が向うに映っているのでした。

美留藻は驚いた余りに、我れを忘れて、あっと叫ぼうとしましたが、その拍子に冷たい水が口の中に這入りましたので、又やっと自分が湖の底に居るのに気が付きました。そうして手足をぶるぶると震わせながら、眼の前の不思議に見惚れて、恍惚としてしまいました。美留藻は今まで賤しい漁師の娘で、自分の姿なぞを構った事は一度も無く、殊にこの国では昔から、鏡というものを見た者も聞いた者も無く、つまり自分の姿を見たのはこれが初めてでしたから、驚いたのも無理はありませぬ。