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しらがこぞう
白髪小僧
杉山 萠円
「白髪小僧」誠文堂、1922(大正11)年11月
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 98,770 字 · 194 页
今美留女姫は自分がこの書物を手に入れた仔細を、両親やその他の人々に読んで聞かせたいと思っているから、このお話しは先ず美留女姫の身の上の事から始まらなければならない。
今この書物を声高らかに読んでいる美留女姫は前にもある通り、この国第一の金持ちで、この国第一の貴い役目と身分とを持っている公爵美留楼という人の末娘で、今年十四になったばかりであるが、生れ付きお話が大好きで、毎日一ツ宛新しいお話を聞かねばその晩眠る事が出来ないのが癖であった。姫の両親はそのために、毎日毎日新しいお話の書物を一冊宛買ってやったが、今は最早その書物が五ツの倉庫に一パイになってしまった。この上にはどこの書物屋を探しても、今までと違った新しいお話の書物は、一冊も無いようになってしまった。
ところがここに一ツ困った事には、この美留女姫は大層物憶えがよくて、どんなに古く聞いた話でも少しも間違わずにはっきりと記憶えていて、初めの二言三言聞けばすぐにあとの話を皆思い出してしまうから、古い書物を二度読んで聞かせる訳には行かなかった。それかといって、この上に新しいお話は世界中に只の一ツも無いのだから、姫は毎日毎晩新らしいお話が聞きたくて聞きたくて夜もおちおち眠る事が出来なかった。