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ひゃくゆきょう

百喩経

岡本 かの子

「三田文学」1934(昭和9)年11月号

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 10,474 字 · 21 页

青空文庫

叱られた女は、ここに於て主人を恨むべく――

「だが五人を恨むことは――」

と女は思った。

「わたしらのような女には五人も一度に人を恨むことは出来ない。そういうように心が出来て居ない。やっぱり仇を一人にして恨みを突き詰めて行かなければ……で、恨むのは、どの旦那様にしよう」

思い迷った女は八つ口から赤い手を出したまま裏口に立った。

そこに指で押しながら考えをまとめるに都合よくさいわい山査子には小さい刺があった。

田夫思二王女一喩

田夫が貴姫を恋するこころを人に打ち明けた。人は「王女に汝の思いを通じたが汝を王女は嫌いと云った」と告げたにも拘らず田夫は強いても王女に自分を認めさせようとした。

「世に美しいものとはこの姫のことか」

陀堀多は畑の中から輿の姫を眺めた。彼は今、黒黍を刈っていた。

金銀の瓔珞、七宝の胸かい、けしの花のような軽い輿。輿を乗せた小さい白象は虹でかがられた毛毬のように輝いて居た。輿は象の歩るく度びにうつらうつらと揺れた。

陀堀多は知らず知らず黍の蔭に身を隠しながら姫の姿を追った。

本あぜ道は榕樹の林へ向っていた。そこまではまだ二三町あった。