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ひゃくゆきょう
百喩経
岡本 かの子
「三田文学」1934(昭和9)年11月号
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 10,474 字 · 21 页
停車場から馳けっこをして来たのだ。
相変らずこんな娘達だ。その用意しといて宜かった、と保志子は思った。
「早くお上んなさいな。ざっとお湯を使って直ぐ御飯よ」
その間にも保志子は夫が五日溜めた愛情の今こそ肩に胸に一度に降り注がれるのを待って身構えた。
「この柿、たいへん、おいしい。半分やろうか」
夫の愛の分量は、やっぱり一日分だけのものしか出なかった。保志子が望むほど濃くも多くもなって居なかった。それよりも妹たちは、初めて来た姉の家の茶の間や庭先を見廻すのに気をとられて居た。それに飽きると今度は姉の夫をすぐバット細工の友達にして仕舞った。
「牛乳は牝牛の腹には――と保志子は考えた――溜めて置かれないものね」
三重楼喩
愚な富豪が木匠を呼んで三重楼を建て度いが、自分は三重楼の下の二層は要らない、上一層だけが欲しいと云った。
「あの土台も作らず、あの胴も作らず、あのほっそりした塔の頂上だけをあの高さに於て作りたいものだと考えて見なさい」
セーヌ河の中の島でむく犬のリックとラックに向うから遊で飽かれて仕舞った老人で食扶持の年金は独逸の償金で支払われて居るのがエッフェル塔を指してこういった。