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ひゃくしょうやのすけのはなし

百姓弥之助の話

中里 介山

01 第一冊 植民地の巻

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 51,621 字 · 99 页

青空文庫

は疑いないし、兎に角、野良猫としてのルンペンとしての自分を有籍者としての待遇を与えられた気分になったことは疑いがない。

右の如くしてこの仔猫と二日二晩の生活を共にしたが、自分はまた東京へ出かけなければならぬ、そこで、塾の青年にこの仔猫と、猫飯皿とを与えて自分が帰るまで保育するように托して置いた。

それから二日程経て来て見ると、猫は何処へ行ったか行衛が知れない、塾の青年に聞いて見ると、あれから忽ちに行衛不明になってしまいましたが、あれは本来野良猫で、とても居つかないように出来ている、殊に虎猫であんなに尻尾の長いのは祟りをする猫だといって人が嫌がる、それで誰人かこっちへ持って来て捨てたのでしょう、とても居つくものではないです、と祟られることを気味悪がるようである、猫ぐらいに祟られてどうするものかとかっ飛ばしながら、耕書堂の戸を開いて居間に構えていると、またいつの間にか例の猫がやって来た、そうして余の膝に這い上ったり、後をついたり、どうしても離れまじとすること、その前と少しも変らない、余はこれに食物と肴の屑とを与えてまたも二晩ばかり生活を共にした、それからまた例によって耕書堂の戸を閉して東京へ出かけた、その時に猫を取っ捕えて青年達に托すること前の通りにして出た。