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ひゃくしょうやのすけのはなし
百姓弥之助の話
中里 介山
01 第一冊 植民地の巻
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 51,621 字 · 99 页
今出征兵を送る一行を見て、弥之助は四十何年も昔の葬式の事が何となしに思い出されて来た。あれとこれとは決して性質を同じゅうするものではないが、ただ、聯想だけがそこへ連なって来た、勇ましい軍歌の声が停車場に近い桑畑の中から聞えて来る。
勝たずば生きて還らじと
誓う心の勇ましさ
或は草に伏しかくれ
或は――
それを聞くと、昔のなあーんまいだんぶつ――が流れ込んで、高く登る幾流の旗を見やると、
「生き葬い!」
斯ういう気持ちが犇々として魂を吹いて来た。
三
この村でも、最早毎日のように出征兵が送られて、二十人以上にも達している。
上海に於て戦死者が一人、負傷者が一人、出たとの事である、それから、この村の人ではないが先程まで、この村で小学校の教鞭をとっていた青年教師が一人これも上海で戦死したそうだ。
弥之助がついこの間、この畑道から散歩のついでに村の小学校の庭へ入り込んだ事がある。丁度放課時間で子供達が遊戯をしたり、試作園の中で土いじりをしたりしている中を通り抜けて行こうとすると、教室の廊下の中からちょっき姿の若い教師が現われて、なつかしそうに弥之助の傍へ寄って来て、