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ひゃくしょうやのすけのはなし
百姓弥之助の話
中里 介山
01 第一冊 植民地の巻
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 51,621 字 · 99 页
二十八
百姓弥之助は毎月数十種の雑誌に眼を通して居る、それはほとんど全部が皆交換寄贈を受けるものであった。それを弥之助はことごとく眼を通して居る、どんな小さい引札の様なものでも、読まないと云う事はない、そうして読んだ後は要領の索引を作って併せて保存して置く。今日は「能率新報」と云って、失礼ながらたった四頁の引札がわりの、ちらしのような雑誌、神田の阿部商店という「名宛印刷器」製造元の機関紙であるが、その中で次のような一文を発見した。
国民皆農私説
私は「国民総耕作」と言つたことがある。池田林儀が独乙留学から帰つて「優生運動」といふのをやり出した時、その雑誌に書いたのである。十五年もまへだ。
国民皆兵である如く、吾々は皆農でなくてはならぬといふのである。兵役に服すると同様に、一生のうちの一二年間、農業に従事して、その年中の国民の主食物を収穫するのである。
この方法を繰返してゆけば、日本人は、皆自ら耕した所の米を生涯たべる権利と余裕とを持つことができるのである。
青年の労働国家奉仕も、この方法でできる。現在の農家ではできぬ治水、開墾などもできる。