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ひゃくあしちがい
百足ちがい
山本 周五郎
「キング」大日本雄辯會講談社、1950(昭和25)年8月
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 28,491 字 · 56 页
……どうした順序でそんな話に進展したものか、やがておかね嬢は彼に結婚の要求をした。みつ枝のように含みやほのめかしぬきの、いってみれば膝詰め談判であった。
――ではとにかく、母に相談しまして。
又四郎はこういってその場を脱出した。なぜかなら、そのとき彼は雪海和尚から「三十まですべてを待て」といわれていた。嫁取りも出世も、三十までがまんしろと、人相に顕われているというのである。……そこで適当な時間をおいておかね嬢を訪問し、かくかくであるからと理由を述べたうえ、三十になるまで待って貰いたいと条件を出した。おかね嬢は些かの躊躇もなく応諾し、かなり積極的な態度で、あでやかに媚笑し、すり寄って、彼の手を握った。
「わたくしあなたをお信じ致しますわ、殿方はお信じしないことにしているのですけれど、でも秋成さまはお信じ致しますわ、あなたはほかの方とはどこかしら違っていらっしゃるのですもの、……ええ、お待ちしますわ」
すっかり聞き終ってから、みつ枝はやさしく頷き、弟を労るように微笑した、「そしてその方とは、その後もずっとお信りを交わしていらっしゃいますの」
「――信りですって、いいえ、信りなんていちども、……しかし、どうしてです」