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ひゃくあしちがい

百足ちがい

山本 周五郎

「キング」大日本雄辯會講談社、1950(昭和25)年8月

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 28,491 字 · 56 页

青空文庫

それひと間きりの部屋はぼろとがらくたの山で、その中に三人の幼児が撲りあったりひっ掻いたり、泣いたり喚いたりしていた。饐えたような、云いようのない不愉快な匂いが充満し、崩れたような壁の向うでは、酔った男がわけのわからないたわ言をだみ声で叫びちらしていた。

「人の面倒はみておくもんだ、おれはおまえだけには出来るだけの尽力をしたからな」左馬之助はなお続けて云った、「――ときに金を少し貸して呉れないか、一両、いや三両くらいあればいい、じっさい、こんこんこっほん、いやじっさいあの頃はお互いにむちゃな事をしたものさ、ああ、……まったく愉快だった、おまえのためにはおれは、ずいぶんと散財した、こんこんこん、……三両なければ、二両でも、いいんだが、一分でも、……あとは次でいい、とにかくおれはおまえだけは親友だと思っているんだ、……じっさい今でも忘れないが、おまえの云ったことさ、うっ、……困ったらきっと駆けつける、簡野には世話になったからな、ってさ、……うれしい、おまえおれを泣かすぞ、……金は今は一分でもいい、あとはいつでも、なるべく早いほうがいいが、……おれは親友の情だけにはまだ、失望していない」