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ひゃくあしちがい
百足ちがい
山本 周五郎
「キング」大日本雄辯會講談社、1950(昭和25)年8月
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 28,491 字 · 56 页
「はぐらかすのはよして呉れ、たくさんだ」
彼はやや高い声でこう云った。例のないことである、運蔵は口を噤んだ。
「それでおれは今日、条件を二つもって来た、その一つは城中で、あのときの人たちを集めて、そこでみんなの前で謝罪して貰いたいんだ」
「だってそれは、そんな、それはひどい、少なくとも普請奉行ともある身で、それは自殺するのと同じだよ、それはひどいよ」
「では次の条件だ」こちらは穏やかに云った、「――明後日はいけないけれども、ほかの日と、時刻と、場所とをそっちで定めて呉れないか」
「――だって、どうしてそんな、……そんなことを定めてどうするのさ」
「果し合だよ、わかってるじゃないか」
唐川はとびだしそうな眼でこっちを見た、もう一段と顔が歪み、唇が白くなって震えだした。それからごくっと唾をのみ、喉になにか詰ったような声で云った。
「まさか、まさか、……そんなことを、ははは、……からかってるんだね」
「私のことを云うのなら本気だよ」
運蔵はとつぜんぱっと座を立った。あんまりとつぜんだったので、又四郎は思わず刀のほうへ手を伸ばした。しかしそれよりも遙かに早く、運蔵はまるで燕のように、廊下から庭へとすっ飛んでいた。