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ひゃくあしちがい
百足ちがい
山本 周五郎
「キング」大日本雄辯會講談社、1950(昭和25)年8月
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 28,491 字 · 56 页
「もしかしたらそれは百足とげじげじをお間違えにでもなったんですか」
このときは彼は娘の顔を見た。
「あなたは、その、たいへん、……いろいろなことをご存じのようですが、いったい、そのどこから、……うう、どうしてそんなことを知っておいでになるのですか」
「あらもちろん赤井さまからうかがったんですわ、石谷さまや双木さまからも、……三人とも御親友なのですってね、御勤番ちゅうたびたびいらしって、秋成さまのお噂をよくなさいましたわ、ですからこの上邸で貴方のことを知らない方はないでしょうけれど、いちばんよく存じあげているのはわたくしよ、わたくしなにもかもうかがいましたの、お三人が同じ事を五度仰しゃるまでゆるしてさしあげなかったのですから」
又四郎としては挨拶の言葉に窮した。赤井喜兵衛、石谷堅之助、双木文造、三人ともいちおう親友である。かれらは三年まえに江戸詰になり、又四郎といれちがいに国許へ帰ってきた。かれらは又四郎のことをよく知っている、かれらが三人で話したとすれば、……なかんずく赤井喜兵衛は話を面白くする点で達人ともいうべき才をもっているから、これはもはやじたばたしてもしようがない。