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まなつのよのゆめ

真夏の夜の夢

宮本 百合子

「女靴の跡」高島屋出版部、1948(昭和23)年2月

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 2,981 字 · 6 页

青空文庫

現代とルネッサンス時代との間には、もう四五世紀が経過している。きょうのあらゆる社会の現象は、その間に発展し、複雑化し、爛熟した世界の資本主義がもたらす必然的な諸事情に関係していて、その激甚な矛盾、相剋、その発展の統一の方式が現代の世紀の課題であるということを、一九三三年に、ルネッサンスを叫んだ人々は認めようとしなかった。これらの人々にとってその不条理は、むしろ当然であったとも云える。なぜなら、この人たちは、当時の日本の支配者が、侵略戦争に対する批判や超国家主義への疑問を封じた、その立場によりたって、社会に階級があり文化に堕落性がある現代の歴史的事実を否定したのだから。そして、歴史の現実の内容づけなしにただ人間解放を叫んだのであったから。彼等にはルネッサンスを、そういう角度からつかう必要があった。歴史的に発展する方向を示さない人間性の解放、情熱のよび出しは、ファシズムをやがて内容として与えるのに便利な下ごしらえであった。

一九四五年の秋から昨今、また人間性の解放ということが云われ、ルネッサンスがそれにつれてひき出されている。こんどの人間性解放ということは、ポツダム宣言受諾後の日本として、封建性への反逆その否定、ブルジョア民主主義の完成という問題とからんで出されている。