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しられざるアメリカ
知られざるアメリカ
中谷 宇吉郎
「心」平凡社、1955(昭和30)年3月
N3 · 进阶 · 新字新假名 · 9,617 字 · 20 页
妻などは、来て一月も経ったら、「せっかくアメリカへ来たのに、映画も見られないし、街は真暗だし、これでは何のために来たのかわからない」とこぼしたくらいである。それで夜のシカゴを見物に連れて行った。さすがに大シカゴだけあって、ネオン・サインが絢爛と輝いて、全くの不夜城を現出している。妻は大いに満足して「ああ綺麗だ、まるで東京へ帰ったようだ」と、すっかり御機嫌になった。ウィネツカの町は、まずこういう調子の町である。
ウィネツカの住民
町の説明は、これくらいにして、次は住民の話にはいろう。
これまでの話だと、何だか皆がつんとすました「ざあます」階級の連中ばかりのように思われるかもしれない。しかし実際につき合ってみると、案外に人がよくて、適当に野性もあって、底抜けに親切で、気持のよい連中が多かった。僅か二年ばかりのつき合いであったが、帰る時には、妻などは、親しくしていた夫人たちに抱きつかれて、双方ぼろぼろ涙を流しながら、別れて来たものである。
初めは、東洋人が来ることは歓迎しない、というような風説もあって、少し気を悪くしたが、それはデマだということが、すぐわかった。