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しられざるアメリカ
知られざるアメリカ
中谷 宇吉郎
「心」平凡社、1955(昭和30)年3月
N3 · 进阶 · 新字新假名 · 9,617 字 · 20 页
それ以来、すっかり向米一辺倒になって、「本当にいい奥さんね、アメリカ人はえらいわ、私たちも……」という工合に、すっかり兜を脱いでしまった。
細君に米化されると、一番迷惑するのは、亭主である。それで「なあに、日本人だって、もう少し暮しが楽になれば、朝鮮人に家を貸す時に、皆そういうふうにするさ」といって見たが、「さあ、どうですかね」と、なかなか承服しない。どうも簡単な性質なもので、すぐ買収されてしまうらしい。
もっとも英語などを習うには、簡単な性質の方がよいらしく、一年もしたら、もう井戸端会議なんかに出席して、マッカーシイがどうのこうのという話を、家まで持ち込んで来るのだから、驚いたものである。アメリカにも井戸端会議があって、ウィネツカのような有閑夫人の温床では、それがなかなか盛んなようである。
町全体にも、また各通りにも、婦人有権者倶楽部という会があって、時々集まって、昼飯の会をしたり、お茶の会をしたりする。亭主どもは、毎日正味八時間オフィスで働いているが、共稼ぎをしなくてもよい階級の細君連は、日中大分閑があるらしい。家の中は、至極便利重宝に出来ていて、台所で暮す時間など、日本の主婦の五分の一もあるかなしである。