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いしべいゆうれい
石塀幽霊
大阪 圭吉
「新青年」1935(昭和10)年7月号
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 12,907 字 · 26 页
「君。ちょっと訊くがね。この家へは、新聞や散広告は、どこから入れるかね?」
「え、新聞?」と彼女は体を起してエプロンで手を拭きながら「新聞は、その小門を開けて、台所まで届けて呉れますわ。郵便もね。でも、広告などは、その小門を一寸開けて、そこから投げ込んで行きますが」
「成る程。有難う」
蜂須賀巡査は大きく頷いた。けれどもその顔色は見る見る蒼褪め、額口には一層激しい困惑の色を浮べて今までの元気はどこへやら、下唇を堅く噛みしめながら、顫える指先で盛んに顳のあたりをトントンと軽く叩きながら、塑像のように立竦んでしまった。
――妙だ……つまりここから、散広告が投げこまれる……それから犯人が女を殺しに出かける途中で、投げこまれたこの広告を踏みつける……それでいいか? それでいいのかナ?……駄目駄目。サッパリ理窟が合わんぞ! 蜂須賀巡査は頻りに苦吟しはじめた。
するとそこへ、取調べを終った司法主任の一行が、宏と実の双生児を引立てて意気揚々と出かけて来た。蜂須賀巡査は急にうろたえはじめた。そしてどぎまぎした調子で司法主任へ云った。
「待って下さい。ちょっと疑問があるんです」