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いしべいゆうれい
石塀幽霊
大阪 圭吉
「新青年」1935(昭和10)年7月号
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 12,907 字 · 26 页
ポストが見えますか?……」
雄太郎君は途端に蒼くなった。ナンと雄太郎君の視線の届くところ、そこにはポストの寸影すら見えないではないか! ポストより数間手前にある筈の街燈が、青白い光を、夕暗の中へボンヤリと投げかけている以外には、大きくカーブしている高い石塀の蔭になって、まるで呑まれたようにポストの影は見えないではないか!
蜂須賀巡査は、雄太郎君の肩に手をかけながら、顫える声でいった。
「君、いったいこれは、どうしたと云うのだ!」
四
そんなわけですっかりあがってしまい、その晩殆んど一睡もせずに考え続けてしまった雄太郎君は、けれども翌朝早くから蜂須賀巡査に叩き起されると、ひどく不機嫌に着物を着換えて部屋を出た。
「一寸手伝って貰いたいんですがね」と階段を降りながら、急に親しげな調子で新米巡査は口を切った。「昨晩は、僕だって少しも眠れなかったです。あれから僕は、一晩中飲んだくれのチンドン屋を探し廻ったんですよ。その結果、これはまだ内密の話なんだが、大変な発見をしたんです。……つまり、犯行の暫く後にあそこを通ったチンドン屋の広告ビラを、二人の犯人が、例の庭下駄で踏みつけているんです。