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いしべいゆうれい

石塀幽霊

大阪 圭吉

「新青年」1935(昭和10)年7月号

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 12,907 字 · 26 页

青空文庫

「じゃあ、戸川差配人が犯人?」

「そうだ。ところで、戸川は何分位邸内にいたかね?」

「約五分? 位です。でも、差配人は、カバンを置きがてら急を知らせに……」

「そのカバンだよ。今日僕が、蜂須賀君と一緒に調べたのは。その中に、白い浴衣と黒い兵児帯が一人前這入っていたんだ!……つまり戸川は、皆んな午睡の最中に、電話で自分の女房を呼び出すと、君達証人の前で予め双生児の指紋をつけて置いた兇器で刺殺し、君達の目の届かない曲角の向うで、洋服の上へ着ていた浴衣を脱いでカバンへ突込むと、そ奴を邸内へ置きにいった序に、大急ぎで庭下駄の詭計を弄し、女中達を叩き起したと云う寸法だ。……なんの事はない。秋森家の双生児と殺された女との醜関係から、警察が双生児に持たせた犯罪の痴情的動機を、僕は逆にそうして極めて自然に、女の夫である戸川弥市に持たせたまでさ」

「じゃあいったい、もう一人の共犯者は?」

「共犯? 共犯なんて始めからないよ」

「待って下さい。貴方は、僕の視力を無視するんですか? 僕はハッキリこの眼で、二人の犯人を……」

「いや、君がムキになるのも尤もだ。君の云うその共犯者はあの石塀の奇蹟と非常に深い関係があるんだ。