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さとうどろぼう

砂糖泥棒

黒島 伝治

1923(大正12)年12月

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 4,108 字 · 9 页

青空文庫

」彼はどこまでも同じ言葉を繰りかえした。

杜氏は、こういう風にして、一寸した疵を突きとめられ、二三年分の貯金を不有にして出て行った者を既に五六人も見ていた。そして、十三年も勤続している彼の身の上にもやがてこういうことがやって来るのではないかと、一寸馬鹿らしい気がした。が、この場合、与助をたゝき出すのが、主人に重く使われている自分の役目だと思った。そして、与助の願いに取り合わなかった。

与助は、生児を抱いて寝ている嚊のことを思った。やっと歩きだした二人目の子供が、まだよく草履をはかないので裸足で冷えないように、小さい靴足袋を買ってやらねばならない。一カ月も前から考えていることも思い出した。一文なしで、解雇になってはどうすることも出来なかった。

彼は、前にも二三度、砂糖や醤油を盗んだことがあった。

「これでも買うたら三十銭も五十銭も取られるせに、だいぶ助けになる。」妻は与助を省みて喜んだ。砂糖や醤油は、自分の家で作ろうにも作られないものだった。

二人の子供は、二三度、砂糖を少し宛分けてやると、それに味をつけて、与助が醤油倉の仕事から帰ると何か貰うことにした。