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ひぶん

碑文

豊島 与志雄

――近代伝説――

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 13,294 字 · 27 页

青空文庫

あの壺にはそういう傷はないようでございます。」

「うむ分った。……それから、伯父さんは時々旅に出られるが、別に商売の用でもなさそうだし、いつも曖昧らしいが、大体どの方面におもに行かれるのかね。」

「私もよく存じませんがあなた様はどうお考えでございますか。」

「分らないから聞くんじゃないか。」

「奥様やお嬢様へのおみやげ物は、大抵、上海あたりの品物のようでございます。」

「ああそうか。……それから、家に時々、穀物類の商人とかがやって来て、奥の室で人を遠ざけて、伯父さんと長い間話しこんでゆくことがあるそうだが、それは本当の商人かね。」

「私には分りませんが、あなた様はどうお考えでございますか。」

「またか。分らないから聞いてるんだよ。」

「普通の商人でありましたなら、それほど長い時間、秘密に話しこむこともございますまい。」

「そうか。……それにしても、伯父さんはよく、済南の紅卍字教の母院や青島の后天宮に、詣られるそうだが、本当かね。」

「本当でございましょう。紅卍字会には相当な寄附金をなすっておいでになります。また、青島の后天宮は、何を祭ってありますところか御存じでございますか。