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へきがんたくはつ

碧眼托鉢

太宰 治

――馬をさへ眺むる雪の朝かな――

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 5,667 字 · 12 页

青空文庫

法螺でない。どれもこれも、私に十頁とは読ませなかった。私は、生れてはじめて、祈る気持を体験した。「いい読みものが在るように。いい読みものが在るように。」いい読みものがなかった。二三の小説は、私を激怒させた。内村鑑三の随筆集だけは、一週間くらい私の枕もとから消えずにいた。私は、その随筆集から二三の言葉を引用しようと思ったが、だめであった。全部を引用しなければいけないような気がするのだ。これは、「自然。」と同じくらいに、おそろしき本である。

私はこの本にひきずり廻されたことを告白する。ひとつには、「トルストイの聖書。」への反感も手伝って、いよいよ、この内村鑑三の信仰の書にまいってしまった。いまの私には、虫のような沈黙があるだけだ。私は信仰の世界に一歩、足を踏みいれているようだ。これだけの男なんだ。これ以上うつくしくもなければ、これ以下に卑劣でもない。ああ、言葉のむなしさ。饒舌への困惑。いちいち、君のいうとおりだ。だまっていておくれ。そうとも、天の配慮を信じているのだ。御国の来らむことを。(嘘から出たまこと。やけくそから出た信仰。)

日本浪曼派の一週年記念号に、私は、以上のいつわらざる、ぎりぎりの告白を書きしるす。