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しゃかいとにんげんのせいちょう

社会と人間の成長

宮本 百合子

講演「ソヴェト文化の夕」の講演速記、1947(昭和22)年6月29日

N3 · 进阶 · 新字新假名 · 10,495 字 · 21 页

青空文庫

このハガキの主はそういうような話をきいたこともあったでしょう。それが捕虜となって、ソヴェトの生活をしてみて、つい先頃まで、戦争の間は、世界で最も善良な、最も名誉ある立派な民族だと教えられていたその日本人が、ソヴェト人の生活ぶりとくらべてみて、日本人はどうして利己心が強いのだろう、と見も知らない私に嘆いて手紙をよこす、その気持はどういうことから変化をして来たのでしょう。それはやはり、その人が実際にその中で暮して見たソヴェトの社会生活そのものから、日本人の利己心について考えはじめたのであろうと思います。私はその葉書の返事に――直接書いたわけではありませんが――人間というものは、日本人が民族性として利己主義であるのではなくて、自分を護って生きるために、まず自己ということを万事につけて先に考えなければならないような社会の仕くみだから、どうしても利己主義になるので、日本民族そのものが、劣等な、利己心の強いものであるというわけではないということ、それは社会の事情によって変化をするということを返事をしたわけです。

私がソヴェトにいた期間、私は全然政治的な関係はもっておりませんでしたし、外交官でも、新聞記者でもありませんでした。