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しゃかいじひょう
社会時評
戸坂 潤
「文藝春秋」1933(昭和8年)年6月~1937(昭和12)年5月
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 195,408 字 · 380 页
「我国の体育は皇国の大国是に基き、皇道精神の涵養を第一義として実施さるべきなり、陸軍戸山学校はこの大方針に基き国民体育を一層健実ならしむるため寄与する処あるを期す。」之が戸山学校の主張である。なる程戸山学校式な体操や銃剣術はそうだろう。けれどもわが国にはレッキとした体育の権威があることを忘れてはならぬ。高等師範を有っている文部省というものがあるのだ。そこで文部省は満州派の戸山学校に対して、反満州派を代表して、体協支持の声明を出すことにしようとしたが、併し流石にそれはこの際穏当でないというので、次官談の形式で遠慮がちに小さい声で声明することに決した。こうして陸上選手は一致出場に一応決意したのである。無論他の選手達は、盛んに不参加を声明して満州派振りを見せている。
処が又々××××棍棒を持った壮漢が甲子園のスポーツマン・ホテルに殴り込みをやり、某選手などおかげで足首を挫いて了うという事件が発生した。××××を第一とする「純な」スポーツが何であるかは再び之でも判るようなものだが、今度は別に戸山学校も声明書を発表してはいない。とに角こうした弾圧の下に、反満州派の選手一行は平洋丸に乗り込み、今頃はどうやら危険区域は脱出したように見えた。