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しゃかいじひょう

社会時評

戸坂 潤

「文藝春秋」1933(昭和8年)年6月~1937(昭和12)年5月

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 195,408 字 · 380 页

青空文庫

文部大臣の権勢正に恐るべきものがあるのである。――処が、世間の噂によると、上には上があるもので、当の××××が中国地方の某代議士によって動かされているというのである。××××の折角の名誉のために、そういう事実はないのだと信じるが、併し噂のあること自身は事実だ。その噂によると、その某代議士が滝川教授の著書か講演かに、どうしたハズミからか、興味を持って、之こそ赤化思想であると云って、パンフレットまで造って、六十四議会で策動したということである。文部大臣はその見識と落ち付きにも拘らず、何故だか、そういう教授は必ず処分すると即答して了ったので、決して約束を破らないわが卓越したこの政党人大臣は、その約束を只今道徳的に履行しているのである、と。なる程そうして見ると、文相のこの道徳美談の犠牲者が、他の何人でもあり得ずに、特に滝川教授でなければならないわけが、少しは理性的に理解出来る。だがそうすれば、理解出来なくなるのは、文相のかの見識と落ち付きがどこへ行ったかという点だ。

某代議士がなぜ滝川教授を選択したかは、本当の処は判らないにしても、一つの仮定を置けば想像上はよく判る。