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しゃかいじひょう

社会時評

戸坂 潤

「文藝春秋」1933(昭和8年)年6月~1937(昭和12)年5月

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 195,408 字 · 380 页

青空文庫

一般国民は甚だしく之に感謝の意を表し、銘々夫々の立場から之を援助することを惜んでいない。都下の各新聞は検挙の模様を毎日克明に報道することによって、国民と検察当局とへ刺※を与えていることに興味を有っているように見える。この企ては必ずしも警視庁としては珍しくないのだが、今回のような大規模で組織的なのは多分今まで見られなかった処だろう。警視庁が自発的にやったことで、之ほど評判のよいものを之まで見たことがない。

但し世間で一等心配になるのは、検挙されたり起訴されたりするだろうこれ等暴力団が後日釈放された暁に仇をしはしないか、ということだから、この検挙は半永久的に続くのでなければ何にもならぬ。今後の代々の総監の手腕を評価するバロメータが、暴力団検挙の成績如何にあることにでもなるのでなければ、暴力団は決して影をひそめるようにはなるまい。そうしない限りこの企ては決して成功しないだろう。

だが一体、警視庁のこの企てのどの点がかくも世間を喜ばせているのか。それはこの種の犯罪が、一般の世間人から見て、紛れもなく実証的な現実味を有っていると見えるからなのだ。と云うのは、例えば共産党というようなものが恐るべきだとか何とか云っても、日本ではまだ殆んど一人も、本当に共産党員のために苦しめられた人間はいないらしく、共産党の害悪に就い