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しゃかいじひょう

社会時評

戸坂 潤

「文藝春秋」1933(昭和8年)年6月~1937(昭和12)年5月

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 195,408 字 · 380 页

青空文庫

仮に京大の法学部などが横車を押したにしても、教壇や試験場での机上の解釈は尻目にかけて、大審院の実践的解釈が物をいう。法律の世界でも――他の科学的世界に於てさえ何とも知れないのだが――、大学教授よりも判検事の方が、科学的権威があるのだ。

とにかく治安維持法という名称を有った法律が行われているのは、立派な事実である。行われない法律もあるかも知れないが、治安維持法に限って、そんな遊んでいる法律ではない。私は法律というものを、一種の道具と思っているが、道具というものは、使われれば使われる程、進歩するものである。この法律は制定されてからそんなに年数の立つものではないに拘らず、実に急速な進歩をするので有名であるが、それがどんなに多く使われる法律であるかということ、即ちそれがどんなに重宝な法律であるかということは、この進歩のテンポの旺盛な点から測定出来る。

最近一遍「改正」された治安維持法が、この頃再び、司法省の原案に基いて「改正」されそうである。最初の該法文は、「国体の変革又は私有財産の否認」を企てるものといった具合に、国体と私有財産制とを同一視させないとも限らないような、それ自身危険な、自分自身がこの法文に引っ懸かることを告白しそうな、性質のものだったのが、第一次の改正によって、二つの文章に分離された。