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しゃかいじひょう
社会時評
戸坂 潤
「文藝春秋」1933(昭和8年)年6月~1937(昭和12)年5月
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 195,408 字 · 380 页
その瞬間、神様は偶然にも楽園のアダムとイヴを思い出して了ったのである。――そこで早稲田の真剣な応援団は、猛然として贖罪と救済とのために起ち上り、同時に慶応側の権威ある指揮棒が行方不明になった。ということに、少くとも早稲田側ではなっている。この際、切符の不正改札をしたり、「顔」に向っては言葉通り顔負けをしたりしつづけている場内整理員などは、早稲田の応援団によって一たまりもなく押し除けられたのは云うまでもないし、大喜びで写真を撮り始めた新聞記者が思い切って処罰されたのも当然である。
さて早大側は林檎をぶつけた慶応野球部選手某に謝罪しろと主張するし、慶応側は早大野球部にリーグを脱退しろと要求するので、問題はリーグの委員会にうつされることになった。早大側の要求は当然であるとして、慶応側の主張には一寸腑に落ちない点がないでもあるまい。あばれたのは早稲田野球部ではなくて応援団だったのだから、野球部にリーグ脱退を迫るということは少し変のようだが、併し、応援団が、決して野球と離れたものではなくて、大学自身にとって野球部が持っている重大な意義をば別の形で云い表わしている真剣な存在だったということを思い出せば、慶応側の要求も亦無理ではない。