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しゃちょうひしょ

社長秘書

佐々木 邦

「面白倶楽部」大日本雄辯會講談社、1926(大正15)年8月

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 6,738 字 · 14 页

青空文庫

と塚本さんは真実に小便を持て余しているようだった。

それから五六日過ぎて、

「塚本君、何うだね? 王侯貴人は?」

と社長が尋ねた。

「はあ。あれは実に王侯貴人です。お蔭さまで能く寝られます」

「それは宜かった」

「矢っ張り社長は年の効で好いことを御存知ですな。感心しました。あんな簡単な解決法を今まで思いつかなかったのが不思議です」

と塚本さんは深く社長を徳としていた。

「そんなに具合の好いものですかな?」

と星野さんが釣り込まれた。

「好いとも。一種の健康法として広く薦める価値がある。夜分便所に起きる為めに何れぐらい風邪をひいたり睡眠不足に陥ったりするものがあるか知れない。それが皆中老以上の有為な人達だから、積って見ると随分国家経済に影響している」

「はゝあ」

「それからあれは精神修養の一端になる。あれくらい安楽なことはない。実際王侯貴人の気分が味わえる。我輩は何んなに失敗しても零落してもこの贅沢丈けは出来るのだと思うと、そこに安心立命がある」

と社長は又々長談義になった。

私が社長秘書を承わったのは正月だった。それから春が過ぎて夏が来た。その間に私は社長の、