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しゃちょうひしょ

社長秘書

佐々木 邦

「面白倶楽部」大日本雄辯會講談社、1926(大正15)年8月

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 6,738 字 · 14 页

青空文庫

『然うか。それなら宜い』とナカ/\現金な男さ」

「塚本さん、イヨ/\お伽噺ですよ」

と星野さんは万年筆を手にしたが、さりとて振りもぎる次第にも行かなかった。

「もう少しだから辛抱し給え」

と社長は圧迫を加えて、

「頭取は『何で死んだ? 何病で?』と訊く。『病気じゃありません。余り吃驚して亡くなられたそうです』『何をそんなに吃驚したんだ?』『実は……』『実は何だい? 然う実はの奥に又実はがあっちゃ困るじゃないか』『実は奥さんが運転手と一緒にお逃げになったんです』と、書生は恐る/\実はの終点に達した。『うゝん』と大将、もう一溜まりもなく目を廻してしまったという筋さ」

と語り終った。

「ハッハヽヽヽ」

と私は大笑いをした。しかし重役達はもうこの上出世のしようがないから苦笑いをしていた。

或日のこと塚本さんが珍らしく自ら進んで社長の御高説を叩いた。尤も最初は単に、

「社長は実に健啖ですなあ」

とその前の晩招待されたお礼の序に言ったのだった。

「それはこの通り図体が大きいからさ」

「矢っ張り御丈夫だからでしょう。考えて見ると、私は迚も社長のお年まで生きられそうもありません」