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かみのごとくよわし

神の如く弱し

菊池 寛

「中央公論」1920(大正9)年1月号

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 13,929 字 · 28 页

青空文庫

かと雄吉は思った。

而も、河野のそうした申出が、相手の高田から『大きなお世話だ。』と云うように情なく断られると、今度は最後の逃げ道として、帰郷を計画しながら、而も国へ帰ったかと思うと、もう三日振りには、淋しくて堪らなくて、東京へ帰って来たのであった。

それに、自分独りで、グッと踏み堪える力がなくて、毎日のように友人を代りばんこに尋ねて、同じ愚痴を繰り返して、安価のお座なりの同情で、やっと淋しさをまぎらして居るような河野の態度も、雄吉には堪らなくはがゆかった。

それも、細木だとか雄吉など云う極く親しい友人が、河野の愚痴を聴き飽いて、もう新鮮な同情を与えなくなると、今度は高等学校時代の旧友や、一寸した顔馴染の人達を囚えて、河野は相変らず、同じ事を繰り返して居るようであった。

「若し、河野があの失恋をグッと踏み堪えて居て、田舎で半年も、じっと黙って居て呉れゝば、我々はどれほど河野を尊敬したかも知れない。河野だって、何れほど男を上げたかも知れない。」と、雄吉は細木などに、よくそんな事を云って居た。

河野の失恋は、その腐ったような尾を、何時迄も、引いて居た。