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かみサマをうんだひとびと

神サマを生んだ人々

坂口 安吾

「キング 第二九巻第一一号」1953(昭和28)年9月1日

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 13,108 字 · 27 页

青空文庫

わかりました。では御案内いたしましょう」

「キミ、ホントですか。まさかパンパン宿ではあるまいね」

「とんでもない。全市にこれ一軒という飛び切りの静寂境です。そこを独占なさることができます。お値段は普通旅館なみ。マ、ボクにまかせなさい」

こう云って安福軒が案内したところは山の中腹の崖下の小さな家であった。

「ネ。閑静でしょう」

四隣大別荘にかこまれた一軒家、深山のように閑静には相違ないが、目当の家は炭焼小屋に毛の生えたような小さな家。

「これ、旅館ですか」

「ちかごろはシモタ家がそれぞれ旅館をやっております。わざと看板は出しませんが、この方が親切テイネイで、気分満点ですよ」

玄関を一足はいると屋内の全貌が一目でわかる。座敷らしいのは一間しかない。あとは茶の間と女中部屋。これを独占できなければ、他に泊る部屋がありやしない。感心に小さいながらも温泉はついていた。安福軒はそこへ大巻博士を案内して、

「ホレ、ごらんなさい。これが温泉ですよ。つまり、あなたの一室のために便所と浴室と台所と女中が附属しているようなものですよ。これに不足を云ったら罰が当りますぜ。どこにこんな至れり尽せりの旅館がありますか」