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かみサマをうんだひとびと

神サマを生んだ人々

坂口 安吾

「キング 第二九巻第一一号」1953(昭和28)年9月1日

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 13,108 字 · 27 页

青空文庫

長い時間は待たせなかった。日野クンは戻ってきて、

「どうぞ、こちらへ」

教祖の客間らしいところへ通された。あたり前の座敷である。

教祖は二人を迎えて一礼。特に大巻先生には、

「いつぞやは大そう失礼いたしました」

三ツ指ついて軽く頭を下げる。例の如き無表情。口をきいているだけ、むしろ今までになく尋常な様子にさえ見えるのである。

ハテナ、分裂病は治ったのかな、と大巻先生は考えたほどだ。目ツキにも特に狂的なけわしさは見られなかった。

「上衣をお脱ぎになった方が」

と、日野クンはアンマの受附けのように軽くすすめる。

「では」

と大巻先生が上衣をぬぐのを待って、

「どうぞ、こちらへ」

教祖が腕をとって部屋の上手へつれて行って坐らせた。

「この辺がお悪いのですね」

教祖は彼の正面に坐り、彼の胃のあたりに軽く手を当てて、ジッと顔をのぞきこむ。

すでに教祖の表情は変っていた。武芸者のような無表情。あるいはキツネのお面をかぶったようだ。大巻先生はキヌギヌの彼女の泣きぬれた顔を思いだした。これと同じような突きつめた顔をして、やがてヨヨと泣き伏したのである。性慾を絶した可憐な気品がこもっていた。