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かみだな
神棚
豊島 与志雄
「新潮」1923(大正12)年6月
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 21,427 字 · 44 页
足のぐらぐらする餉台の上には馬鈴薯と大根とのごった煮と冷たい飯とだけだった。それでも空っ腹には旨かった。これで熱いのをきゅーっと一杯やれたら……とそんな気がしたが、さすがに口へは出せなかった。子供達までが、如何にも旨そうに食っていた。廻らぬ箸の先からこぼれ落ちる飯粒まで、一々拾って食っていた。
「どうだ、旨いか。」と自分でも知らないまに言葉が出た。
「うん。」と答えて信一は、馬鈴薯を頬張りながら眼をくるくるさした。
「みよはどうだい?」
みよは何とも答えないで、きょとんと首を斜に動かしてみせた。
「おい、」と俺はお久の方へ向いて云った、「みんな旨そうに食ってるじゃないか。毎日旨く飯が食えりゃあ何もくよくよすることはねえよ。」
お久はじっと眼を伏せていた。何かに心動かされたとみえて、涙ぐんだらしい瞬きさえしていた。それでも溜息をつくことを忘れなかった。そして云った。
「せめてね、よいお正月だけでも迎えられるといいんだが……。」
「何を云ってるんだい! よい正月だか悪い正月だか、なってみなけりゃ分らねえさ。」
「そんな呑気なことを云ってるからお前さんは駄目なんだよ。