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まつりのよる
祭りの夜
豊島 与志雄
「日本小説」1948(昭和23)年4月
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 9,781 字 · 20 页
」
「どうだったの。」と政代は尋ねた。
「あ、あれですか。丁度よいところで、半吉ですよ。」
「半吉……あたったわねえ。」
政代は私の顔を見て笑った。
「奥さんが大吉で、わたくしが半吉、よくしたものですよ。これがあべこべだったら、困りますからねえ。気違いのキチにしたところで、そうでございましょう。」
彼女が半キチだとしても、奥さんの方は大キチだと、お留さんは笑いながら話すのである。――ある時、外のお風呂に行って、帰りに、吾妻下駄の鼻緒をぷつりと踏み切った。それをハンカチで結えて、そろりそろりと、重病人のように歩いていると、通りかかった医者らしい人が、どうかしましたか、と聞く。いいえ、と頭を振っても、足を指して、怪我でもなすった様子だが、と押っ被せる。下駄の鼻緒が切れたんです。はあ左様か、用心なさい。けろりとして、行き過ぎてしまった。その後で、政代は急に腹が立ってきた。下駄をぬいで足袋はだしになり、すたすた歩いてきた。片手にお湯の道具の風呂敷包みをかかえ、片手に下駄をぶらさげ、足袋はだしで、息を切らして台所口を引き開けた、その姿は、どう見ても狂人じみていた。