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まつりのよる
祭りの夜
豊島 与志雄
「日本小説」1948(昭和23)年4月
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 9,781 字 · 20 页
そして山門外で、私も彼女も、如何に恥知らずの快楽に耽ったことか。彼女は私を弄び、私も彼女を弄んだ。それでも、彼女に言わせれば、清い交りだった。
私は布団の上に坐って、やたらに煙草をふかした。腹の底から湧いてくる憤怒と肉にきざみこまれてる愛着とが、一緒によれ合って燃え上ってくる。もし彼女がそこにいたら、私は彼女に飛びかかって、どんなことをしたか自分でも分らない。
だが立ち上ると頭がふらつき、足もふらついていた。まだ酔ってたのであろうか。水をまた飲んだ。そして室を出た。それは奥の室だった。廊下伝いに台所の方へ行き、戸口の締りを探していると、はおった丹前の裾を引きずって政代が出てきた。
戸外の明るい陽光が、欄間の硝子からさしこんでいた。彼女は眩しそうな眼で、私の方を伏目がちに眺めた。その眼にまた深い陰が宿った。――私はふしぎにもその時、別な眼を思い起した。北京で、友人と同居して、あちらの女中を一人使っていたが、その家から引き払う時、前夜、私は酒に酔って、その女中の手を握った。彼女は何か考えるように、黙って眼を伏せていたが、やがてその眼に、深い陰が宿ってきたのだった。