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こうせんぜんじのことども
禅堂生活
鈴木 大拙
鈴木大拙『禅堂生活』。同一底本的分册已合并为一书。收入:洪川禅師のことども、釈宗演師を語る、僧堂教育論、楞迦窟老大師の一年忌に当りて、鹿山庵居。
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 27,634 字 · 57 页
この老師の心持が如何にも有り難いと思う。初めて外国へ出たとき桑港で検疫のため荷物を消毒せられて大損害を受け、それからエンゼル島へ逐いやられて二週間流罪の憂き目を見たとき、老師は懇篤なる手紙を送りて、大いに激励せられた。その時の記憶は今に忘れぬ。それから四、五年たってラサル市の病院でチブスを病んで夢中になったことがある。その時はもう死ぬるのだろうと思うたが、まだ仕かけの著述がその儘になるのが残念で囈語にも出した。誰も知り合いのもののなき処で病に疲れると云うは物淋しいものである。その時老師は「理趣品」を読んで病気平癒を祈ったと云うて御札を送って下さった。その時の有り難い心持は今に何とも云えないのである。老師の広い愛から見れば予の如きもその一分に浴したに過ぎないのであろうけれど、これを受ける身から云うと、只自分のためのような気がして、老師の親情が心の底まで銘せらるるのである。今更こんな事をこんな場処で記すべきでないかも知れぬが、予は老師を以て情の人であると感じたその一端を人にも知らせたいと思い、又一は自警自憤報恩底の一弁の香に代えたいと思うに過ぎぬのである。