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ふくざわゆきち

福沢諭吉

高山 毅

ペンは剣よりも強し

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 54,555 字 · 109 页

青空文庫

」

「ずいぶんむずかしいんでしょうね。」

「それは、むずかしいにきまっているさ。けれども、原書をよむことができれば、ほんとうのことがわかるからおもしろいぞ。どうだ、やってみないか、諭吉。」

「やりましょう。どうせ、人のよむものなら、横文字であろうが、なんであろうが、やれないということはないでしょうから。」

諭吉の負けずぎらいな気持ちが、むくむくと、むねの中にわきあがって、そういわせました。

「そうだとも。おまえなら、その気にさえなれば、きっとやれるとおもうよ。」

と、兄さんは、にっこりわらいました。

けれども、中津には原書もなければ、おしえてくれる先生もありません。オランダのことばを勉強するには――それを蘭学といっていました――、長崎へいかなければなりません。長崎だけが、そのころの西洋の文明がながれこむ、一つのまどのようなところだったのです。

さいわいなことに、兄さんが、役所の用事で長崎へでかけることになったので、諭吉もいっしょにいくことになりました。

(中津からとびだしたい。)

という諭吉のきぼうは、こうしてかなえられたのでした。

数日ののち、長崎についた諭吉は、桶屋町の光永寺という寺にいきました。