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わたくしたちのけんせつ
私たちの建設
宮本 百合子
「私たちの建設」実業之日本社、1946(昭和21)年4月
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 54,430 字 · 107 页
婦人だからモラトリアムにかかわりない、という架空の天国は、地上にはないのである。女性という性に即した実例を一つ考えよう。戦時中、婦人たちは何といわれただろう、あのように、生めよ、殖えよ、と励まされた。今日、同じ女性は何といわれているだろう。日本の人口問題は重大である、として産児制限の輪は、生めよ、殖えよ、と云った権力のその面前で闘わされている。五百円は五人家族「標準」といわれている。女性の性そのものの自然さ、高貴ささえこのように方便によって翻弄されるとき私たち婦人の胸にはほとばしる熱い思いがある。純潔な怒りが燃えるのである。母性はゆたかに、愛らしい子供たちは地にみちて、しかもそれを育て上げられる社会の条件、施設をこそ、女性は求める。それ故にこそ、母性の保護として、子供たち自身の幸福のために、科学的な調節の自由はなければならない。私たち婦人は、現支配者たちがひきおこした戦争惨禍の責任を糊塗しようとして、政府の無能を彌縫しようとして、云々する産児制限に、決して無条件に母なる肉体をさらそうとはしないのである。
今日の私たち日本の人民は、日本の生活がこのようにも艱苦にみち、引裂かれているからこそ、ひとしお、わがふるさとを、深い心に抱きとっていると思う。