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わたしのしんじょう
私の信条
牧野 富太郎
「世界」岩波書店、1953(昭和28)年
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 2,058 字 · 5 页
私は大学にいる時、大学での責任仕事としてこの大著述に着手した。それは私一人の編著であった。そして私を信じて創めてこの仕事を打立て任せてくれた恩人は当時大学の総長の浜尾新先生であった。
私は間もなく浜尾先生の仁侠により、至大の歓喜、感激、乃至決心を以て欣然その著述に着手した。私はこの書物について一生を捧げるつもりでいた、そして次のような抱負を持っていた。すなわち第一には日本には、これくらいの仕事をする人があるぞという事、その図は極めて詳細正確で世界でもまずこれ程のものがそうザラにはない事、かつ図中植物の姿はもとよりその花や果実などの解剖図も極めて精密完全に書く事、その描図の技術は極めて優秀にする事、図版の大きさを大形にする事、その植物図は悉く皆実物から忠実に写生する事、このようにして日本の植物を極めて精密にかつ実際と違わぬよう現わす事、まずおよそこんな抱負と目的とをもって私は該著述の仕事を始めた。その原稿は精根を打込み自分で描いてこれを優れた手腕のある銅版師に托して銅版彫刻とし或は石版印刷としたが、後には幾枚かのその原図を写生画に巧みで、私の信任する若手の画工に手伝わしたこともあった。