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しほんたいへいき

私本太平記(三)

吉川 英治

吉川英治『私本太平記(三)』。同一底本的分册已合并为一书。收入:私本太平記、私本太平記。

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 222,108 字 · 446 页

青空文庫

わずらわしいが、いまその捕虜ノ簿をちょっと繰って見れば。

僧正では、東南院の聖尋、峰ノ春雅、妙法院の執事澄印。

公卿では花山院師賢、あぜちの大納言公敏、北畠具行、侍従の公明、別当実世、烏丸ノ成輔、さえもんの督為明、左中将行房、ちぐさ忠顕、少将能定。

それに北面の武士、諸家の侍、各地のいなか武者、奈良法師のたれかれなど、おもな宮方だけでも六十一名、またそれらの家来けんぞくまで入れれば、記録物の筆法どおり、

計ふるに遑あらず

と、するしかない。

ところで一時とはいえ。

こんな中へ、天皇と皇子も、やがて土地の荒クレどもに追っ立てられて来たのである。それがすぐ坊中の捕虜たちへ水のように伝わったので、一とき、

「……ああ、主上もまた」

と、彼らの取り籠められている獄屋から、無念泣きや嘆声が一せいに洩れたというのは、さもあったろうと思われる。

事の由は、逐次、京都へ早馬されていた。

すぐ千余騎をつれて、常盤範貞(北ノ探題)が、天皇を迎えとりに下ってくる。

が、ひとまずは、宇治の平等院へお移しして、二日後の入京となった。――「花園院御記」によると、武家がたは、後醍醐へお召服の着がえを上げるべきか否かまでいちいち、新帝(後ノ北朝)の侍側、西園寺大納言へ伺いをたてていたという。