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しほんたいへいき
私本太平記(三)
吉川 英治
吉川英治『私本太平記(三)』。同一底本的分册已合并为一书。收入:私本太平記、私本太平記。
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 222,108 字 · 446 页
「それだよ、女の考えも、進んで来ておる。小右京もまだ二十四、五。悩んでいるだろうと思う」
「だからどうしたというんです」
「わしも悩んでいるということをいっているのだ。兼好、あとは読んでくれい」
「それだけでは、ちと難読でございますな。この頃では、お会いになったこともないので?」
「いや、白状するがの。ついこの間、陣の余暇をうかがい、鎌倉の軍監佐々木道誉という資格でなく、個人として、そっと微行で、小右京の隠れ家を見舞うてやったわさ」
「ははあ、後家見舞いですな」
「後家見舞い」
「あちこちの敗亡の公卿館へ、後家見舞いと称えて、夜ごと、東国武者の群れが、築土を乗りこえて入るのを、ずいぶん町の者は見ているそうで」
「ばかな、そんな悪戯かよ。たしかに道誉とて、好き心もないではないが、元々は純な同情だった。けれど訪ねて、泣かれたのがいけなかった」
「まるで女性のせいみたいにしてお仕舞いなさる」
「仏法でもいうではないか、そこを“女性の罪障の深さ”だと。亡き良人の友へ、余りに美しく泣いてみせるなどは、その罪、半分は女にもある」
「なるほど」
「また日もたつにしたがって、小右京の涙も乾いてくるに違いない。