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しほんたいへいき
私本太平記(三)
吉川 英治
吉川英治『私本太平記(三)』。同一底本的分册已合并为一书。收入:私本太平記、私本太平記。
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 222,108 字 · 446 页
とくに道誉は、軍目付といわれており、鎌倉の北条高時に代って、耳目の役を果たしていたので、
「黄母衣の者を組め。巡察に出るぞ」
と、午ごろからは、小隊をひきいて、自身市中の見廻りに出あるいていた。
黄母衣が通る――
町の目は、馬上華やかな若入道の姿へ、まばゆさと、遠い恐れを、そばめ合った。篝屋の兵も敬礼する。――一般に、道誉の評判はたいへんいい。
とくに工芸、美術、建築などの諸職のあいだでは、彼を守護神みたいにありがたがっている。
都に軍馬が満ちてからも、鎌倉同様に、それらの者の保護令を布いただけでなく、彼自身の華奢好みも刺戟して、諸職の振興に一段の戦時景気をよび起していたからだった。
彼が、巡視隊の家士十二人を選んで、そのすべてに白と黄おどしの具足を着せ、黄と白の母衣を負わせ、手綱、馬飾りまですべて山吹ぞっきの行装で練り歩いたなども、一端の例といえよう。――それは暗黒下の殺伐な都に、明るい異彩となったにちがいないから、人はみな、
「佐々木殿の山吹一揆」
と、呼び囃した。
一揆とは、一式の意味である。
色一揆は、ほかの大名にも、流行り出した。
いま、洛内に駐っている諸大将には、大仏貞直、金沢貞冬、長崎四郎左、千葉貞胤、結城親光、六角時信、小山秀朝、江馬越前守、三浦ノ介の入道などが十数ヵ所に門を張っているが、