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しほんたいへいき
私本太平記(三)
吉川 英治
吉川英治『私本太平記(三)』。同一底本的分册已合并为一书。收入:私本太平記、私本太平記。
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 222,108 字 · 446 页
「うかと断を下せぬのは分りきっているが、何せい、こう延々では、ここが堪らぬよ、仲時もほとほと疲れた」
「まこと、今暁のように、残党どもの出没もあり、ややもすれば、先帝奪回とか、先帝御殺害などの風説もあっては、お気の休まるひまもありますまい」
「それらはまあいい。当然な軍務だからな。やりきれんのは、朝に晩にのおむずかりだ、ご逆鱗だ。そのいちいちに仲時参れと、呼びつけられる」
「ご起居のていは」
「いぜんご勇壮そのものだ。獄舎に籠められても、ご自身、罪の意識などはまったくない」
「それや、ありますまい」
「常人でも、笠置いらいの憂き目にあい、獄舎住みとでもなれば、痩せ細るものを、ご健康な点も、驚くべきものがある。そして、板屋にいても、いッかな天皇の礼を執らねば、一切のご応対もして給わぬ」
「それは、きついお気疲れ」
「今もまた、仲時召さるというので、何事かと参ってみると、侍側の者から、ご幽所に火の気も無うては、夜の御寝もお凍えでいらせられる、火桶をそなえよ、という申しつけだ」
「お囲いには炭火もないので?」
「おいてない」
「それはちと……」
「いや、鎌倉の指示で、一切の刃物や火気は厳禁とされておる。