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しほんたいへいき

私本太平記(四)

吉川 英治

吉川英治『私本太平記(四)』。同一底本的分册已合并为一书。收入:私本太平記、私本太平記。

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 229,324 字 · 458 页

青空文庫

また武時の弟覚勝の手勢七十余人は木戸を破り、築土をのりこえ、探題邸の庭内にまで討ち入って一人のこらず斬り死にした。

このほか、市中から街道すじにかけても、むざんな死者が、かなりあった。

それらの打首は、人目だかい諸所方々でさらされたが、わけて犬射ノ馬場の光景は、あまりにも悽惨で目をおおわしめるものがあったという。――馬場の五ヵ所に曝し場をもうけ、それぞれに三段の木を結いわたした。そしてお壺の内(庭内)や築土附近で斬り死にしたおもなる者の首七十余級を梟けならべ、いちいちの首のもとどりに、

むほん人 誰々

と、札を打って幾日もさらしてあったと「博多日記」は誌している。

これまでにも、何かとよく引用書の名をさしはさんで来たが、この博多日記なるものは、とくに異色のあるものなので、ちと余談にはなるが、あえて余談に入ってみたい。

当時、良覚という坊さんが九州のどこかにいた。

僧籍は京都東福寺の法師。

おそらくは九州東福寺領への赴任者として永らくこの地に住んでいた一僧にちがいあるまい。なにしても、この良覚法師は、偶然にも、博多に来ていて、三月十三日の博多合戦を、目のあたりに見ていたのだった。