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しほんたいへいき

私本太平記(四)

吉川 英治

吉川英治『私本太平記(四)』。同一底本的分册已合并为一书。收入:私本太平記、私本太平記。

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 229,324 字 · 458 页

青空文庫

これは彼にかぎらず、出征の将士はいつもこうして行く。そこで桟敷から閲兵を与えている高時も、ばあいによると、主将だけを邸内へ入れて、太刀や酒を賜うことなどあるが、千早金剛の急いらい、そういう古式も略されていた。道誉もそれに倣って外門の礼だけですぐ立った。そして大町口から稲村ヶ崎、金洗い坂と、やがて府内との関門も後ろの遠くにしたと思うと、彼方の砂丘を割っているきれいな川を後ろに、しきりとこなたへ手を振って待つ男があった。

「や、何者だろう、あれは」

道誉の不審に、

「はて見たこともない?」

と、旗もとたちも、眼をこらしあった。

しかし、そのまま駒波をすすめて行くうち、道誉がまず驚いたような口調で言った。

「あっ、這奴だわえ!」

左右の士はなおいぶかった。

「ご存知の者ですか」

「知らいでか。足利家の国家老、高ノ師直という男だ。……あの師直めが、さて何しに?」

先廻りしてここに彼を待っていた師直は、列が近づくやいな、

「おそれいりますが、しばらくのおとどまりを」

と、道誉の馬前にひざまずいて心からな辞儀を作った。

「なにやつだ」

わざと空とぼけて、道誉は。

「遊行の途ではない。